早稲田大学社会安全政策研究所(WIPSS)の共同研究の一つである「司法から福祉へつなぐダイヴァージョン研究会」では、こ
の度、一般社団法人刑事司法福祉フォーラム・オアシスとの共催により、公開シンポジウム「再犯防止と更生支援とは〜これまで、
そして、これから〜」を下記のとおり開催致しました。当日は、300名を超える方々が来場され、フロアーは最後まで熱心に聞き入
る方々で溢れんばかりの盛況でした。
- 開催日時:2019(令和元)年5月18日(土)13:00−17:45
- 開催場所:早稲田大学早稲田キャンパス8号館B1階102教室
- テーマ:「再犯防止と更生支援とは〜これまで、そして、これから〜」
第一部
@基調講演:林 眞琴 名古屋高等検察庁検事長
A再犯防止推進計画に関する説明:吉田 雅之 法務省大臣官房秘書課企画再犯防止推進室長
第二部
パネルディスカッション:「再犯防止推進計画と地域再犯防止推進モデル事業について―地域の課題に共に取り組む―」
登壇者(50音順):
三本松 篤 横浜保護観察所長
田熊 徹 神奈川県福祉子どもみらい局福祉部地域福祉課長
コ田 暁 弁護士(神奈川県弁護士会所属)
中村 葉子 横浜地方検察庁総務部長
山下 康 神奈川県社会福祉士会長、神奈川県地域生活定着支援センター長、横浜地方検察庁社会福祉アドバイザー
コーディネーター:石川 正興 早稲田大学名誉教授、同大学社会安全政策研究所顧問
- 概要:
第一部では、林眞琴氏から、刑事司法と福祉は本来、理念・目的が異なり、刑事司法そのものを「福祉化」することはできず、
また逆に、福祉の側に「司法化」を求めることも適切でなく、刑事司法と福祉の連携には、両者の「異質さ」を前提とした上で、
両者の相互理解の下に異質な両者の「あいだ」をいかにして「つなぐ」かが求められている旨が述べられた。さらに、今後は、刑
事司法と地方公共団体との連携、中でも「地域福祉」との連携が重要であると指摘された。吉田雅之氏からは、再犯防止の取組に
おける刑事司法関係機関と地方公共団体との連携について、地方公共団体との連携の重要性、地域再犯防止推進モデル事業とその
取組例、地方再犯防止推進計画の現状等の点から説明がなされた。
第二部のパネルディスカッションでは、神奈川県再犯防止推進計画の策定の経緯と計画の内容について各登壇者から意見が述べ
られた後に、@再犯防止推進計画の実施に当たって他の機関・団体との連携をどのような形で実現していくのか、A対象者を福祉
や医療へ繋げるための機関・団体連携ネットワークのコーディネート役を誰が担っていくのか、B機関・団体との連携を通して獲
得された経験値をそれぞれの機関・団体においてどのようにして継承していくのか、C3年間にわたる地域再犯防止推進モデル事
業終了後、国からの助成はどうなるのか等、再犯防止推進計画実施上の課題と展望に関して討議が重ねられた。
パネルディスカッション終了後フロアーとの質疑応答が行われ、神田安積氏(弁護士)から、刑事司法と福祉とは対立関係、緊
張関係が内在していることを踏まえ、多角的な観点から議論されることを期待したいと感想が述べられたことに関連して、コーディ
ネーターの石川氏から概ね次のような発言があった。「矛盾は決して解消し得ないものであるが故に「矛盾」と呼ばれるのだと考
えるが、人類はその矛盾を解決するためにこれまでに多くの工夫を重ねてきたし、今後も工夫を重ねていくことになろう。分業に
よって社会が成り立っている以上「縦割りの組織」が主軸になるが、一定の目的を実現させるために「縦割りの組織」を連結させ
る「横の仕組み」を構築することが、再犯防止においても求められている」。
また、堂本暁子氏(更生保護法人両全会顧問、女子刑務所のあり方研究委員会委員長、元千葉県知事)からは、「明石市更生支
援及び再犯防止等に関する条例」の制定に際しての議論を例に、再犯防止と更生支援との関係性について問題提起がなされ、各地
方公共団体の独自性を活かすことの重要性等が指摘された。
<基調講演をされる林眞琴氏>

<法務省の取組について説明される吉田雅之氏>

<パネルディスカッションの様子>

<フロアーの風景>
