社会安全研究財団からの受託研究−共同研究(A)子どもを犯罪から守るための多機関連携の実証的研究

本テーマは、さらに以下3つの分科会によって構成されます。
 分科会@:少年非行対策における少年サポートセンターの活動の実情および今後の展開可能性に関する分析・検討
 分科会A:少年非行予防における民間団体の活動の現状と課題
 分科会B:児童虐待への初期対応に焦点を合わせた多機関連携のあり方に関する多角的研究

分科会@:少年非行対策における少年サポートセンターの活動の実情および今後の展開可能性に関する分析・検討
       −多機関連携を視野に入れて−

 研究代表者:石川正興
  構成員:田村正博・小西暁和・宍倉悠太

  研究概要:1998年に警察庁で取りまとめられた報告書「子供を非行から守るために〜少年非行の今日的問題と警察の取り組み〜」において、 「少年補導職員を中核とした『少年サポートセンター』の構築」が示された。以来、本政策プログラムに基づき、「少年サポートセンター」は、 少年非行等の少年に関わる諸問題に対処するため、全国の都道府県警察において設置されていった。「少年サポートセンター」では、とりわけ、 継続補導・継続的支援等を通じ、重大な非行の前兆となり得る不良行為の段階にある少年や犯罪等の被害に遭った少年、またこれらの少年の家庭 等に対して助言・指導等が行われている。さらに、各「少年サポートセンター」には、都道府県警察ごとの差異も見られるが、地域によっては、 「少年サポートセンター」が、「非行相談」への対応機能の弱まっている児童相談所に代わり、少年の立ち直り支援活動を積極的に実施している ことが分かる。その上、2010年12月に、「待受け型」から「出前型」へと少年の立ち直り支援活動を強化する方針を警察庁も示しており、今後も 「少年サポートセンター」において一層の役割拡大が予想される。本研究においては、学校や児童相談所等との間の多機関連携を視野に入れつつ、 こうした「少年サポートセンター」における少年非行対策に関する活動の実情を明確化させると共に、今後の展開可能性について分析・検討を行うことになる。
 JST研究開発プロジェクト「子どもを犯罪から守るための多機関連携モデルの提唱」として本研究に関連する内容を既に考察しているため、 こうした先行研究を踏まえた上で、本研究を実施することになる。
 本研究においては、上記WIPSS研究員と共に、北九州・札幌・横浜の各「少年サポートセンター」職員の研究協力者も加えて共同研究グループを組織化する。

分科会A:少年非行予防における民間団体の活動の現状と課題
       ―スクールサポーター制度および学校(中学校区)担当保護司制度を中心に―

 研究代表者:石川正興
 構成員:石堂常世・藤野京子・小西暁和・宮古紀宏・宍倉悠太

  研究概要:現在のわが国では、「脱ゆとり教育」と呼ばれる教科教育内容・授業時間数の増加、また発達障害等専門的な対応を要する 児童生徒の指導を始め、学校に対して社会的に要求されている役割が広範かつ多岐に亘っており、学校単独ではこうした要求に十分応え ることが難しくなってきている。これは、生徒指導の領域に関しても例外ではないであろう。学校には、問題行動が見られる児童生徒に 対して、規範意識の醸成を行い、少年非行の重篤化を防止する機能が生徒指導の一環として期待されている。しかし、現在のわが国の学 校を取り巻く状況を鑑みると、学校のみの力では対応に限界があると言える。そこで近年、学校と他機関・民間団体との間で連携・協力 することにより、少年非行の予防活動の活発化が図られている。本研究では、そのうち、「スクールサポーター制度」及び「学校担当保 護司制度」を中心に、その活動の現状と課題を探る。この「スクールサポーター制度」とは、元警察官等の非常勤警察職員が「スクール サポーター」として、少年の非行防止や立ち直り支援、非行・犯罪被害防止教育の支援、学校等における児童生徒の安全確保対策、また 地域安全情報の把握・収集に関して、学校と連携して対応を行うという制度であり、また「学校担当保護司制度」とは、2002年に法務省 によって打ち出された「中学生サポート・アクションプラン」に基づき、非行問題に関する豊富な知識・処遇経験等を有する保護司が「 学校担当保護司」として中学校との連携の下に生徒の非行防止を目的とした様々な地域活動を行うといった制度である。いずれの制度も 学校との連携・協力において様々な工夫がなされながら現在展開されており、研究対象として十分意義のある制度であると考える。
 本研究を実施するため、共同研究グループとして、上記WIPSS研究員の他、北九州・札幌・横浜各市の教育委員会における研究協力者 や保護司稲門会の関係者を含める予定である。

分科会B:児童虐待への初期対応に焦点を合わせた多機関連携のあり方に関する多角的研究

 研究代表者:棚村政行
  構成員:石川正興・岩志和一郎・小西暁和・宍倉悠太・原田綾子・藤原究

  研究概要:「児童虐待」への対応には、(1)予防の段階、(2)問題の解決(発見・介入・保護)の段階、(3)アフター・ケアの段階 がある。そして、これらの各段階において、多機関の間で情報の共有化や実際の行動の連携を図ることができる。ちなみに、東京都のよう な大都市型の児童相談所では、児童福祉司・児童心理士の増員、協力弁護士制度、協力医師制度、家族再統合のための援助事業、乳児全戸 訪問事業など児童相談所の体制強化や関係機関との連携協力が推進されている。しかしながら、児童虐待は、古典的な身体虐待を中心にし たものから、心理的虐待や性的虐待、ネグレクトなど都市型・現代型のものへと認定・発見が困難な複雑事例が増加しつつある。また、発 生する児童虐待のパターンも多様かつ多元的であって、その地域での特質や特有の社会的・経済的・文化的背景を伴い、貧困・障害・疾病 等の複合的な要因が複雑に絡み合っていることが少なくない。2009年には、児童虐待相談・対応件数は、4万4210件と史上最多を記録し、乳 幼児をめぐる痛ましい事件は跡を絶たない。そこで、本研究では、これらの虐待への対応の各段階の内、とりわけ(1)を中心に、また、子 どもの年齢や発達段階に応じた各種の虐待の発見経路や対応の段階に応じて、関係する多機関が協働して(場合によっては、児童相談所と は別の機関を中心として)対応している欧米における取組みや連携の仕方・相互の機関の補完関係等を紹介し、都市の規模、組織相互の関 係、地域特性など具体的な状況に照らして、実行可能な複数のモデルと、その予防・問題解決・フォローアップ機能を十分に発揮しうる基 本的諸条件や環境整備について、具体的に明らかにしたいと考えている。そして、かかる検討を踏まえ、多機関連携のあり方につき具体的な提案を試みる。
 本研究は、JST研究開発プロジェクト「子どもを犯罪から守るための多機関連携モデルの提唱」において実施してきた研究を基盤としてい る。そして、こうした先行研究を踏まえて、発展的な形で本研究を遂行していくことになる。本研究においては、上記WIPSS研究員及び北九 州・札幌・横浜各市の児童相談所における研究協力者により共同研究グループを組織化する。