社会安全研究財団からの受託研究−共同研究(C)高齢化社会における犯罪への対応に関する研究

 研究代表者:石川正興
 構成員:小西暁和・宍倉悠太・渡辺則芳・辰野文理

 研究概要:近年、高齢者による「万引き」の増加など高齢者犯罪が社会的に問題とされ始めている。その背景には高齢化社会の 進展も挙げられるが、本研究においては、こうした高齢者犯罪増加の背景因も明確化させながら、適正かつ有効な高齢者犯罪対策 を打ち出すことが目指される。
 この点、法務省と厚生労働省が協力して2009年7月より「地域生活定着支援事業」を開始した。本事業は、高齢又は障害を有する ため福祉的な支援を必要とする矯正施設出所者に対し、法務省と厚生労働省とが連携して、退所後直ちに福祉サービス等につなげ るための準備を行うことをその内容としている。この事業の中核を担うのが、厚生労働省所管の下、各都道府県に新設された「地 域生活定着支援センター」である。「地域生活定着支援センター」に対しては、法務省所管の矯正・保護関係機関や厚生労働省所 管の社会福祉関係機関と連携を取りつつ、高齢又は障害を有する出所者の地域社会への定着を支援する役割が求められている。こ こではまさに刑事政策と社会福祉政策との架橋が図られていると言える。「地域生活定着支援センター」は、現在47都道府県中の 7割程度の地域に設置されており、全国化への発展途上にある。他方、わが国の高齢化社会は、今後一層進展していくことが見込 まれている。こうした状況においては、並行して高齢受刑者も増加していくものと考えられる。本研究においては、犯罪者の高齢 者化が進展していくわが国の状況において、高齢である出所者をも支援の対象としている「地域生活定着支援センター」が今後ど のような役割を果たしていくことが可能なのかも探究していくことになる。
 2008年度より3年間にわたり「社会内処遇活性化の拠点としての更生保護施設の活用の方向性に関する多角的検討」という研究課 題名の下、科研費・基盤研究(C)を獲得し、本研究所の特別共同研究「高齢化社会における犯罪対策に関する研究」と共に、上記 「共同研究」の先行研究を実施してきた。こうした先行研究を基盤として本研究は遂行されることになる。また、本研究グループ において、先行研究を共同で実施してきた渡辺則芳氏・辰野文理氏(両氏とも国士舘大学)をも含め、上記WIPSS研究員の他、警視 庁・江崎徹治警視(前・生活安全部生活安全総務課特命管理官(犯罪情勢分析))及び科学警察研究所犯罪行動科学部・島田貴仁犯 罪予防研究室長を(また今後、長崎・岐阜・静岡・栃木・宮城各県の「地域生活定着支援センター」担当職員も)研究協力者とする ことを考えている。