社会安全研究財団からの受託研究−共同研究(D)来日外国人犯罪の実態と法的対応に関する研究
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研究代表者:石川正興
研究概要:2009年における来日外国人犯罪の検挙件数は2万7836件、検挙人員は1万3257人となっており、それぞれ前年より3416件 (10.9%)、628人(4.5%)減少している。しかし、平成初期までの情勢と比べると、検挙件数が平成元年の約4.8倍、検挙人員が平成 元年の約2.9倍と大きく増加しており、来日外国人犯罪の検挙状況は、依然として高い水準にあると言える。また、来日外国人犯罪は近 時その特徴が変容してきているとされ、こうした現状を的確に捉えた対策を立てる必要性も高い。犯罪対処活動には(a)予防、(b)抑 止・鎮圧、(c)善後措置の区分があるとされており、来日外国人犯罪に対しても同様の区分に応じた対応を採り得ると考えられる。本研 究においても、来日外国人犯罪を取り巻く現状を踏まえながら、これらの区分に応じて多角的に来日外国人犯罪対策を検討していきたい。 まず、(a)予防の場面に関わる研究課題として、地域住民との共生を図りながら、定住を希望する来日外国人をいかに社会内へと包摂 していくことができるかを検討していく。その際には、入国管理法の制度とその運用状況をも考察の対象に含める必要があろう。また、 (b)抑止・鎮圧の場面に関わる研究課題としては、国内法としての刑法を犯罪がグローバル化している現状にどのように適合させるこ とができるのかを探究する。近年、薬物密輸入事件の検挙件数が増加傾向にあるが、例えば、こうした薬物の密輸入に国内法としての覚 せい剤取締法等を適用するに際しての解釈論上の議論も重要な検討課題である。そして、(c)善後措置の場面に関わる研究課題として、 本研究では、来日外国人犯罪者に対する処遇の現状を探り、適正かつ有効な矯正・保護の方策を提言していきたい。
構成員:松澤伸・小西暁和・宍倉悠太・田川靖紘・高橋正義・渡辺昭一
以上の研究課題のいずれもが、従来、本研究所の「犯罪の国際化に関する多角的研究」又は「日中組織犯罪共同研究」において実施し てきた研究と連関している。従って、本共同研究においては、これらの研究成果を基に発展的に研究を遂行していくことになる。