社会安全研究財団からの受託研究−共同研究(E)東日本大震災における国民の保護
                           ―救出救助等の国際支援に対する国内体制の壁―

 研究代表者:島田征夫
 構成員:林司宣・江泉芳信・重村智計・萬歳寛之・田村正博・皆川誠・尋木真也

 研究概要:本研究は、大規模災害時における国民保護を目的とした救出救助等の国際支援の受入れ体制について、東日本大震災発生 後のわが国の対応を検討することにより、わが国の国内体制のいずれに問題点があるのかを多角的に考察することを目的とする。
 これまで、わが国に対して、156カ国・地域及び41国際機関から支援の申し出がなされている。しかし、こうした多くの支援の申し出が あるにもかかわらず、報道の欠如を含めて、その受け入れには多くの問題点が指摘されている。つまり、この問題は、政府の対応だけでな く、研究者・マスコミによる情報発信も含めた、わが国全体の課題ともいえよう。
 大規模災害が発生した際、災害発生国が救出救助等の応急対応や災害後の復興を単独で行うことが困難な場合、国民の保護は災害発生国 にのみ委ねることはできない。それゆえ、国際支援に対する国内体制の壁は、国民の生命・身体・財産の安全の確保だけでなく、国民生活 の迅速な回復にとっても障害となり、この障害の除去こそが国民の保護のために取り組むべき重要な課題といえるであろう。
 このような課題を検討するにあたって、本研究は、「現地調査」と「理論的研究」の2つを柱とする。まず、現地調査を通じて、東日本大 震災に対する国際支援の国内体制の壁の実態を把握する。この実態把握には、わが国の国民の保護だけでなく、わが国に在留する外国人の保 護の問題も含まれることになる。
 現地調査による実態把握を基礎にして、国際支援に対する国内体制の壁に関する理論的研究を行う。この理論的研究のテーマは、主に、 @国連及び各国政府による国際支援の提供と主権国家の受入れ意思の関係性、A犯罪の防止を含めた治安の回復・維持に関する国際支援と わが国の治安当局との協力関係のあり方、B災害復興の障害となる風評被害の防止におけるメディアの役割、とする。
 本研究は、上記の現地調査と理論的研究を、国際公法、国際私法、国際関係論、警察行政法の研究者が学際的に研究を行うことによって、 不幸にして大規模災害により生活基盤を失われた人たちの復興に向けたわが国の国内体制の整備に必要な視点を提供することになる。このよ うなアプローチは、われわれの研究所の名称に採用している「社会安全政策」にとって極めて重要かつ大きな研究テーマであり、本研究を通 じて、わが国の社会安全政策のあり方について重要な提言を行えるものと確信する。